1、オーディオの趣味

5)オーディオ実験室
c)、パラメトリックEQの実験
c-2)、フリケンシーイコライザの回路構成
ⅰ)回路形式による分類

②電流合成加算減算方式
 電流合成加算減算方式の基本回路図を左図<5c2a4>に示します。
 この回路の基本特許は現在は切れていますが松下電器産業(株)が持っていました。反転増幅器を直列に接続した単純な回路ですが此の特許を逃れる為に色々な回路が考案されていますが、私も含めてPEQの開発に関わった皆さんは可成り苦労をされた様です。
 特許は簡単であれば有るほど良いと云う見本の様な回路です。
 回路図を見て分かる様に一段目の反転増幅器の出力からバンドパスフィルタ(BPF)を介してレベル調整用のスライドVRが接続されています。
 スライドVRの中点は接地されています。亦、スライドVRの両端はシリーズ接続された各々の反転増幅器の反転入力側端子(仮想接地点)に接続されています。
 スライドVRの可動接点を中点に持ってくるとBPFの出力は接地され、大本のOPアンプ系には全く影響を及ぼす事は無いので周波数特性は完全にフラットになります。
 スライドVRの可動接点を1段目の反転入力側に持ってくるとBPFの出力はR5を介して1段目の反転入力(仮想接地点)に電流として入力されます。従ってバンドパス特性の周波数特性を持った抵抗がR2に並列に接続されたのと等価になりOPアンプのゲインがベル型周波数特性を持って減衰する事になります。
 同様にスライドVRの可動接点を2段目の反転入力側に持ってくるとバンドパス特性の周波数特性を持った抵抗がR3に並列に接続されたのと等価になりOPアンプのゲインがベル型周波数特性を持って増大することになります。
 バンドパスフィルタを数個並列に接続しても各々の出力は各仮想接地点に電流で入力されますので互いに影響を受ける事無く独立して制御することが出来ますので完全なパラメトリックイコライザ特性を実現出来ます。
 亦、電流合成加算減算方式では可変レベルが小さくてもATT-NF方式の様にQが下がる事が無いのでスライドVRの位置に関係なくコンスタントQが実現出来ます。
 使用出来るフィルタはBPFに限らず位相の回転が±90度以下で有ればハイパスフィルタ(HPF)、ローパスフィルタ
(LPF)でも使用する事が出来、各々シェルビング(バタフライ)周波数特性に変化します。
 BPFの例として私が30年程前に発明したステートバリアブルBPFの原理回路<FIG 5c2a5>と、一般的な多重帰還型
BPFの原理回路<FIG 5c2a6>を示します。前者はPEQ、後者はGEQのBPFとして使われます。
 普通ステートバリアブルBPFは正相出力型はQが0.66以下に、反転出力型はQが0.33以下には出来ませんが、私の発明したステートバリアブルフィルタは理論的にはQが0から実現できます。他にも従来のステートバリアブルフィルタには無い特徴、利点としてHPF、BPF、LPFの出力を加算しますとQの値に関係無く伝達関数が1になる事等が有りますが詳しい説明は割愛します。特許出願が公開された時、大学の偉い先生にお褒め頂いた事を覚えています。此の先生も先日お亡くなり成られました。此の特許も可成り前に切れています。
 2例のBPFは共に反転出力になりますので実際の回路を実現する時はBPFの前段にバッファアンプを兼ねてゲインが0dBの反転増幅器を挿入して正相型BPFとして使用します。亦、BPFでQを高くする必要が有り此処でのS/Nが取れない時はダイナミックレンジを損なわない範囲で前段の反転バッファアンプにゲインを持たせて信号を大きくしてBPFの出力でゲインを下げて見かけ上のS/Nの改善を図る工夫をする事も有ります。
 SPICEを使用したシミュレーション例は次のページで取り扱います。


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